分かりやすい説明とは?――――これは、塾の先生たちが、一生をかけて追求するテーマです。

ある単元を説明するとき、その説明方法は、いくつもあります。また、同じような説明をしたとしても、先生により、言葉のチョイス、具体例の提示方法、説明の構成、板書の方法などが異なります。そもそも、どの単元にも、「この説明なら絶対に分かりやすい!」という王道的な説明は存在しません。「分かりやすい」という感覚は、生徒によっても異なります。だからこそ、塾の先生たちは、「分かりやすい説明」を常に研究するわけです。

中学生や高校生で学習する単元に、「現在完了形」があります。現在完了形は、時制の一種です。すなわち、現在完了形とは、「時の表し方」ということです。現在完了形を使うときは、「いつ」の話をしているのか、考えてみます。

現在完了形は、「今まで」を表します。例えば、「5年間、静岡に住んでいます」と言いたいとします。さて、「5年間」とは、「いつまで」のことなのでしょう。普通は、5年前から、今までの5年間を指しますよね。「今まで」の話をしたいわけですから、「5年間、静岡に住んでいます」は、現在完了形で表現します。

別の視点で考えてみます。現在完了形は、「経験」「継続」「完了」を表します。「5年間、静岡に住んでいます」というのは、5年間、ずっと住んでいるという意味なので、継続の用法です。つまり、現在完了形で書く、と考えることも出来ます。

意味的に考えても構いません。現在完了形の意味は、「~したことがある」「(ずっと)~している」「(既に)~してしまった」です。今回は、「(ずっと)~している」にあたるので、現在完了形です。

さて、現在完了形の説明を、3パターン挙げてみました。どの説明が分かりやすいと思いましたか?おそらく、生徒によって、答えは変わるはずです。あなたが「分かりやすい」と感じた説明が、「分かりやすい説明」ということになります。

ただ、生徒にとって分かりやすいか、という視点だけで、説明方法は決まりません。一つ目の説明で理解すべき事は、「現在完了形とは、『今まで』を表す」ということです。二つ目の説明は、「『経験』『継続』『完了』の3つの用法がある」、三つ目の説明は、「『~したことがある』・・・等、3つの意味がある」ということです。理解すべきポイントを考えると、一つ目の説明は「今まで」の部分のみ、二つ目と三つ目の説明は3つの用法や意味になります。すなわち、理解量は、一つ目の説明がもっとも少なくなります。そもそも、経験とは「(今まで)~したことがある」、継続とは「(今まで)ずっと~している」、完了とは「(今までに)~した」ということなので、結局は、「今まで」という部分を理解していれば、3つの意味や用法は、導き出せるはずです。

中学生ならば、英語全体で理解すべき事が少なく、また用法や意味を3つ暗記的に説明した方が分かりやすいため、二つ目や三つ目の説明を使うことが多くあります。しかし、高校生や私立中学校の生徒は、英語全体で、理解すべき量が多いため、丸暗記はなるべく避けたいところです。そのため、一つ目の説明を理解して貰うのが望ましいと言えます。

と、当塾の先生たちは、色々なことを考えながら、説明方法を決めています。このように、あれこれ説明方法を悩めるのも、個別指導の良いところです。

個別指導塾のエール学院
学院長 小澤典生